ヘルパンギーナ(コクサッキーウイルス感染症)とプール熱(アデノウイルス感染症)
夏場に流行しやすくなるウイルス感染症として、ヘルパンギーナ手足口病で知られるコクサッキーウイルス感染症プール熱で知られるアデノウイルス感染症などがあります。

ヘルパンギーナ
39℃前後の高い発熱があり、咽頭、口内粘膜、舌などに小さい水疱性の潰瘍ができ食事などで強い痛みがでます。夏場、幼小児に多く平均して4-5日で改善します。病因はコクサッキーA群ウイルス(Coxsackie virus)で、治療は発熱に対する対症療法が主体で、水分・栄養補給や座薬などの解熱剤を用いることもあります。食事は咽頭の痛みが強いため牛乳や刺激の少ない流動食がよく、醤油などの塩分の強いしみるものや刺激物は避けた方が良いでしょう。
  ヘルパンギーナに見られる咽頭の水疱性潰瘍(左)  手足口病の口腔内水泡
急性期から回復期まで便中にウイルスが排出されますが、咽頭にウイルスがいて増殖している間の飛沫感染(咳、くしゃみ、喀痰、会話などの際に病原菌が細かい水滴とともに周囲に飛び散りこれを吸入した人に感染する)が主な感染経路です。
咽頭痛があり咽頭でウイルスが増殖している間は飛沫感染で拡大する可能性が高いため登園(校)はせず自宅でゆっくり治療を行い、全身症状が安定した状態で登園(校)を行うようにします。

同じコクサッキーウイルスA群(A16/A10)やエンテロウイルス71などの感染で口腔粘膜や手足の末端に水疱性発疹の現れる疾患に手足口病があります。乳幼児を中心に初夏から秋にかけて多く見られ、発疹初期に軽度の発熱をみることもあります。潜伏期は1‐5日で、発疹以外は無症状あるいは口腔内の発疹に疼痛を伴う程度で数日間(平均3 - 7日)のうちに自然治癒する基本的には予後良好な疾患です。
コクサッキーウイルス(A24)やエンテロウイルス(70)感染では急性出血性結膜炎がみられることがあり、コクサッキーウイルス感染によるものは充血、流涙、異物感、眼脂、頸部リンパ節腫脹が多くみられます。エンテロウイルス70による急性出血性結膜炎は1981年に日本でも流行したアポロ病として知られています。

プール熱アデノウイルス感染症
アデノウイルス(Adenovirus)には多くの血清型(49型)があり、3型・4型による咽頭結膜熱7型による上気道炎(高熱の持続で細菌性感染症に症状や経過が似ており幼児では重症化することもあり注意が必要です)、8型による流行性角結膜炎40型・41型による胃腸炎11型による出血性膀胱炎などがよく見られます。咽頭結膜熱は主として夏場に主に幼小児に流行し、咽頭扁桃炎結膜炎発熱を三大症状とするアデノウイルス感染症で、3型は夏にプールを介して流行することがありプール熱と呼ばれています。しかし、最近は季節による流行傾向はなくなってきており年間を通して流行することが多くなりました。
アデノウイルスの診断は上記の特徴的な症状と所見で行いますが、A群溶連菌感染の診断と同様に咽頭のぬぐい液による迅速診断(正確な血清型診断ではなくアデノウイルス感染の有無を判定)でも可能です(当クリニックでも行えます)。
一般のウイルス感染による風邪症候群でみられる咽喉頭炎と比べて咽頭痛が強いので水分補給(スポーツドリンク、牛乳など)とともに刺激の少ない食物(アイスクリーム・ヨーグルトやプリン・ゼリー、冷ましたお粥・雑炊・おじや、刺激物や塩分の少ない冷ましたスープなど)を食べさせるようにしましょう。ジュース(みかんやグレープフルーツ)など酸っぱいものは痛みが強くでます。
学校保健では、症状が改善してから2日経過するまでは登園(校)を停止とします。

一般的なウイルス感染によるかぜ症候群はライノウイルスやRSウイルスによるものが多く、症状は多彩ですが上記のように咽頭痛や水疱性(潰瘍形成)を伴う咽頭発赤・腫脹は少なく鑑別は可能です。
A群溶連菌感染症の場合も咽頭の腫脹が強く扁桃に潰瘍(膿痂)を形成し高熱を呈する感染症で流行性があります。


ヘルパンギーナとプール熱についての院内パンフレットをPDFファイル形式でダウンロードできます 
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