この情報は2020年11月頃までの情報です。コロナウイルス感染についての研究が進みワクチンや治療薬が出てきています。まだまだ確定している情報ではなく新事実が分かったらここで発信する予定です。

コロナウイルス感染症関連ではMERS(中東呼吸器症候群)SARS(重症急性呼吸器症候群)新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)があります

新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大し日本でも大変な事態になっています。2月頃に新型コロナウイルス感染症が話題になり始めの頃、国立感染症センターのウェブサイトではコロナウイルスについて次のように記載しています;
ヒトに日常的に感染する4種類のコロナウイルス(Human Coronavirus:HCoV)は、HCoV-229EHCoV-OC43HCoV-NL63HCoV-HKU1である。風邪の10-15%(流行期35%)はこれら4種のコロナウイルスを原因とする。冬季に流行のピークが見られ、ほとんどの子供は6歳までに感染を経験する。多くの感染者は軽症だが、高熱を引き起こすこともある。HCoV-229E、HCoV-OC43が最初に発見されたのは1960年代であり、HCoV-NL63とHCoV-HKU1は2000年代に入って新たに発見された。今回はこれにSARS、MERS、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が加わってヒトに感染する7腫のコロナウイルスがいることになります。実際は、SARSを除く6種類が今あるヒトに拘わるコロナウイルスです。

 
*Summary of probable SARS cases with onset of illness from 1 November 2002 to 31 July 2003、香港(n=1755)のデータより
(国立感染症研究所 感染症疫学センターのwebsiteから)

昨年末から重篤な感染症を引き起こす上記とは異なる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大(中国・武漢から世界中へ)が頻繁に報道されています。コロナウイルス感染による重篤な呼吸器疾患は2003年に中国から周辺国に拡大していったSARS (SARS-CoV) や2012年のMERS (MERS-CoV) がこれまで報告されています。新型コロナウイルスは SARS-CoV-2 という名称です。

新型コロナウイルス感染症について中国の武漢で流行が始まった頃(もっと早くから拡がっていたとのうわさ・憶測あるいは内部告発あり)のLancet誌オンライン版1月24日号掲載の報告。

調査対象は、新型コロナウイルス感染が疑われ、武漢市内の指定病院に入院した患者のうち、RT-PCR法および次世代シーケンシングによって同症と特定された41例で、国際重症急性呼吸器・新興感染症協会(ISARIC)のデータを基に分析を行った。
 主な結果;
・41例中30例(73%)が男性.
・年齢の中央値は49.0歳(四分位範囲:41.0-58.0).
・13例(32%)が何らかの基礎疾患を有していた(糖尿病:8例、高血圧:6例、心血管疾患:6例).
・27例(66%)が海鮮市場(華南海鮮城)に何らかの直接的関係があった(←中国の専門家チームは22日までに、市場で食用として売られていたタケネズミやアナグマなどの
 野生動物が感染源だった可能性が高いとの見方を示した。).
・最初に特定された症例の発症日は2019年12月1日で、当該例ではほかの家族に発熱や呼吸器症状は見られなかったが、その後1例の家族クラスターが判明している.
・発症時の一般的症状は、発熱(98%)、咳(76%)および筋肉痛または疲労(44%)で、喀痰や頭痛、喀血および下痢などもわずかに見られた(インフルエンザに類似).
・全症例で肺炎があり、胸部CTで異常な所見が認められ、98%で両側性病変を有していた.
・40例中22例(55%)で呼吸困難が見られ、発症から呼吸困難までの期間の中央値は8.0日(四分位範囲:5.0-13.0).
・合併症として、急性呼吸促迫症候群(29%)、RNAaemia(15%)、急性心障害(12%)、2次感染(10%)などが見られた.
・32%がICUに入り、15%が死亡した.

著者らは、本研究以降も感染者および死亡者数が急速に増加していることを踏まえ、「今回の新型コロナウイルスが効率的なヒト-ヒト感染能力を獲得したのではないかと懸念している」とし、「パンデミックの可能性があるため、今後の宿主適応、ウイルスの進化、感染性、伝染性および病原性を注意深く監視しなければならない」と述べている。
 原著論文はこちら Huang C, et al. Lancet. 2020 Jan 24. [Epub ahead of print]

上記論文は1月24日発表で早急にまとめて投稿したとしても1月中旬頃の状況と推測され、4月13日現在でのJohns-Hopkins大学の発表している感染状況で約185万人以上の感染者(死者数は約11万人以上)が報告されています。5大陸に感染者がみられWHOは3月初旬に遅ればせながら“パンデミック”を宣言しました。ヒトーヒト感染は確実に起っています。空気感染(エアゾル感染)も起っていると報告している医療関係者もいますが、飛沫感染<接触→粘膜>が主で空気感染は起こっていない、が定説です。ノロウイルスの様に空気中に飛散したウイルスを吸い込むことで感染が拡大するなら加湿は効果があると推測されます。これまでのように、手洗いに加えて濃厚接触者や感染を疑われる人のマスク着用は効果大で、さらに加湿器の使用、部屋の換気も効果が期待できます。2月-3月は花粉症の季節と重なり良からぬ目的での買い占め等でマスク不足が起こっています。健康な方のマスク着用はあまり効果はないと言われており咳エチケットとして咳やくしゃみの時の対策としては有用と思います。本来、口や鼻をカバーすることが大切ですが眼の粘膜からも感染は起こるのでむやみに眼を触らないことも大切です(花粉症の方は特に注意)。

コロナウイルス感染症について専門家は次のように話をされています;
コロナウイルス感染拡大は「3月までに終結」と、根路銘国昭先生(1939年、沖縄県生まれ、北海道大学大学院中退<獣医学博士>。スペイン風邪ウイルスのルーツを解明するなど、ウイルス研究の国際的第一人者)が断言する理由;
2020年2月3日、上海公衆衛生臨床センターや復旦大学公衆衛生学部などが科学誌「nature」に、重度の呼吸症候群を発症した武漢の食品市場就労者から得たコロナウイルスのゲノム(RNA遺伝子、2万9903ヌクレオチド)の解析結果を論文にして発表した。これが以前に中国のコウモリで確認されたSARS様コロナウイルスと、89.1%の共通点があったという内容。これらのウイルスは、何らかの動物に長い時間潜み続け、出撃の準備(変異)を整えて、動物やヒトへの感染を開始するもので、科学誌「nature」には、最近まで人間に流行してきたウイルスを、たった1mmほどの小さな昆虫が多く保存していることを明らかにした論文も発表されている。
さらに、根路銘国昭先生は今のCOVID-19の対策について意見を述べておられる;
閉鎖した空間に感染者や発症者を閉じ込めるのでは、ウイルスを培養しているのに等しい。最近エアロゾル感染という説が出ているが、空気中に長時間浮遊し「空気感染」するインフルエンザウイルスと違い、コロナウイルスは「飛沫核感染」しかしない。しかもコロナウイルスは、空気中で1-2メートルも飛べば死滅する。SARSの時(2003年)、ベトナムの病院では窓を開けて扇風機を回しSARSウイルスを空へ放つという思い切った方策をとり感染を防いだという報告があった。この意外だが思い切ったコロナウイルスとの戦い方は、2004年2月、重要な教訓として米国の国立生物工学情報センターに記録された。(「Lack of SARS Transmission among Public Hospital Workers, Vietnam」)。
ウイルスの多くは、外殻(エンベロープ)に覆われたボール状で、外側にトゲ(スパイクタンパク質)をたくさん備えている。コロナウイルスでは、トゲのタンパク質が健康な細胞の表面の受容体(レセプター)にとりつき、そこから細胞内に侵入し、ひとたび侵入したあとは、増殖するためRNA(生命設計図)を駆使して細胞内の材料で自らのコピーを大量に生産、それらが細胞の外に出てさらなる増殖へと拡大を続ける。根路銘先生は、「ところがコロナウイルスの「トゲ」は脆弱で、空気中では脱げてしまう。そのため、咳や痰で排出した飛沫に含まれるコロナウイルスは、1メートルも飛べば死滅してしまう。クルーズ船も同様で、クルーズ船をウイルス培養装置にしてはいけない。感染者を閉鎖空間に閉じ込めておくのでは、武漢の病院やSARSの時のベトナムのA病院と同じにならないかと心配です。」と説かれている。
コロナウイルス感染対策として、「コロナウイルスは壊れやすいので、1%の界面活性剤を噴霧するだけで殺せます。特別な消毒剤がなくても、水にごくごくわずかな家庭用の洗剤や石けんを溶かしたもの使うのでも効果があります。また手洗いでは、水だけで洗うのでは十分ではないので、石けんを使うことです。石けんはウイルスを作っている膜を溶かしますから。また、飛沫核感染はしますが、コロナウイルスは感染力が強いインフルエンザウイルスよりは御しやすいので、感染者、肺炎発症者に近づく時はマスクをするなどを心がければ、いずれ終息します。」と説明されている。
  出典:2月14日 Yahoo!ニュース 科学 から抜粋

一方、新型コロナウイルス感染は簡単には収束しないと言う研究者もいます。日本国内については、80%以上が軽症の、通常の風邪様症状で治まる感染者が多く、肺炎で呼吸管理が必要な海外と比較して重症者は少ない状況です。ただ、3月に連休があり、その約2週間後にあたる4月上旬から急激に感染者数が増加しています。軽症の場合は仕事、学校、外出等控えることが少なくこれがかえって感染を拡大する要因になっている、また、感染の拡大している海外から多くの人たちが帰国して検査で陽性と診断され2週間の自己隔離(自宅、ホテル、施設等)も要請であるがゆえに強制力はなく、さらに、ヒトの集まる閉鎖空間(カラオケ、バー・クラブ、イベント等)に行ってそこで感染を増加してしまう事例が多く見られること、感染が収束していくことは容易ではないと推定できるということです。インフルエンザ、新型インフルエンザ同様に季節性感染症となって毎年みられる、いわゆる“風邪”の一つとなっていくと推定できます。

2002年から2003年に流行したSARSと比べて今回のCOVID-19の特徴について次のような専門家の意見があります。SARSと今回のCOVID−19は同じコロナウイルス(80%くらいの遺伝情報が共通)ですが、異なる特徴がありSARSはウイルスが気管支おく(肺)に侵入して肺内で増殖していきなり重症化するため致死率が高くなる傾向がありました。SARSウイルスは急速に肺炎に進展していくことが重症急性呼吸器症候群と呼ばれる所以です。一方、COVID-19のウイルス(SARS-CoV-2)は上気道(咽頭、喉頭、鼻腔等)に付着して増殖します。従って、咳やくしゃみ、鼻水をぬぐうなどで容易に飛散、ものへの付着を起こし新たな感染を拡げる原因となります。一部はSARSウイルスのように気管支おくに拡がって肺炎を引き起こします。そのため致死率はSARSより低くなっています。SARSは重症化することが多いですが感染率は高くなく、COVID-19では全般に軽症ですが感染率は高くなるといえます。空気中に浮遊するコロナウイルスは上記理由でごく短時間で不活化されますがモノに付着したコロナウイルスは長く活性を保っていて48-72時間位は活性を保っていて長いものは1週間近く活性があったとも報告されています。

2002年から2003年に流行したSARSと比べて今回のCOVID-19の特徴について次のような専門家の意見があります。SARSと今回のCOVID−19は同じコロナウイルス(80%くらいの遺伝情報が共通)ですが、異なる特徴がありSARSはウイルスが気管支おく(肺)に侵入して肺内で増殖していきなり重症化するため致死率が高くなる傾向がありました。SARSウイルスは急速に肺炎に進展していくことが重症急性呼吸器症候群と呼ばれる所以です。一方、COVID-19のウイルス(SARS-CoV-2)は上気道(咽頭、喉頭、鼻腔等)に付着して増殖します。従って、咳やくしゃみ、鼻水をぬぐうなどで容易に飛散、ものへの付着を起こし新たな感染を拡げる原因となります。一部はSARSウイルスのように気管支おくに拡がって肺炎を引き起こします。そのため致死率はSARSより低くなっています。SARSは重症化することが多いですが感染率は高くなく、COVID-19では全般に軽症ですが感染率は高くなるといえます。
SARSは8月が感染流行期だったことも収束を早めましたが今回のウイルスの収束は簡単ではないと想像できます。それでも、最近の中国国内の報道では気温が20℃以上だとウイルス活動が低下する、中国国内の暖かい地域では感染者数がゼロまたは低い、つまり暖かくなると感染力が弱まる、といっているそうで(中国の方から聞きました)、また、3月中旬で新たな感染者は減少し収束に向かっていると中国政府は宣言していますが!?、日本国内でも暖かくなり湿度の増加する梅雨時になると(6月頃?)新たな感染は減少していくと推測(期待)できます。インフルエンザは夏の季節でもみられますし、ただ、今の新型コロナウイルス感染症も東南アジアなど暖かい地域でも発生があることから気温が上がると活動しなくなるわけではありません。ウイルスは消えて消滅するのではなく季節性感染症として次の年もみられる可能性は充分あると思います。早く迅速な診断方法とワクチン、治療薬がでると良いです。診断方法や治療薬については、各国、各研究機関、企業など努力で開発が続けられています。

新型コロナウイルスのタイプ
最近の米科学アカデミーに載った独英の研究では新型コロナウイルスには3つのタイプがあるとしています。Type A はコウモリから見つかったウイルスにもっとも近いタイプでSaline型と呼ばれているタイプと同じです。広東省の住民、日本人、武漢に滞在していた米国人等から見つかっています。Type B はType A から分れたもので武漢とその周辺地域、東アジアに多いタイプです。また、Type C は Type B に由来し、フランスイタリアスウェーデン米国本土ブラジル等(その他、シンガポール、香港、台湾、韓国)など欧米に多いタイプで、Leucine型といわれたものと同じタイプです。Type CLeucine型のように重症化しやすいタイプの様です。

新型コロナウイルス感染症の検査と治療
PCR検査
COVID-19に対する代表的な検査方法で既に知られていますが絶対的なものではありません。特異度は高いといわれており99.9%くらいありますが、感度はそれほど高くなく70%くらいといわれています。つまり、疑わしい100人の集団を検査したら70人が陽性、30人が陰性と判定されますが、この30人は偽陰性、つまり陰性だけど本当は陽性、という状況ができます。この30人の人は陰性と言われ安心して市中に出歩いて感染を拡大させるリスクが出てきます。従って、PCR検査の正確度はあまり高いといえず疑いの濃厚な小さな集団で全員実施することは有用でも100万人、1000万人等大きな人口の集団全員に検査することは逆に感染拡大のリスクを高めることになりかねません。特異度の観点からは1000人の検査のうち1名の人が本当は陰性なのに陽性といわれてしまう可能性があるということです。自分が新型コロナウイルスに感染したかもしれないと思ったときは(風邪症状が続く、37.5度以上の熱が4日以上続く、味覚・嗅覚障害がある等)14日間は外出を控える、あるいは、可能なかぎり仕事も避けるべきです。

その他の診断方法や治療薬について
1.クラボウは3月12日、新型コロナウイルスの検査キットを16日に発売すると発表した。イムノクロマト法を用い、15分で感染の有無を目視で判定できる。衛生研究所や臨床検査会社などに、1日当たり1万テスト分を供給す計画。イムノクロマト法による新型コロナの迅速検査キットは国内初とみられる。保険適用を視野に入れている。キットは感染時に体内で生成される特定の抗体を検出する。PCR法で検出が難しいとされている感染初期でも判定できる。PCR法は検体中のウイルス量の影響を受けやすいが、同キットは血液中に抗体が存在すれば判定可能。サンプル採取の方法や部位による偽陰性も出にくい。感染の初期段階で生成される抗体「IgM」用と感染後長期間にわたり最も多く生成される抗体「IgG」用の2種類を用意し、正診率はそれぞれ95・72%、94・24%。陰性判定率については、ともに100%。併用することで検査精度は高まる。2種ともに価格は税別で2万5000円。この検査キットは中国の診療ガイドラインに採用され中国の提携先企業が製造したもの。一方、カナダのArtron社製の新型コロナウイルス抗体検出キットはEUのガイドラインに従っていて信頼性も高いもの。

2.群馬大学血液内科学分野の宮澤悠里氏らは3月10日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と診断されたダイアモンド・プリンセスの乗客だった70歳代の女性患者に関する症例報告を行った。報告では、血清IgA(免疫グロブリンA)が530mg/dL(正常範囲110-410mg/dL)と上昇していたことに着目した。IgAは「咽頭や気管支壁の粘膜、粘液分泌物に多く存在し、抗原に対して非特異的に反応する」(宮澤氏ら)性質を持ち、局所の感染防御に役立つ抗体の一つで、女性患者の重症化リスクは低く、自然軽快の見込みが高いと考えたという。

3.血液抗体価の測定:新型コロナウイルス特異性IgM抗体は発病3-5日後に陽性として検出されることが多く、回復期に検出されるIgG抗体は抗体価が急性期より4倍以上増加するため診断に有用です。現在米国でそのキットが生産されており日本に輸入されるかまだ不詳です(自国を優先するでしょうし)。また、キットには中国製もありますが、私見ではありますが、発生地が販売(商売)するのは防火犯自身が素知らぬ顔をして消防士として出動するようで納得できませんし、PCR検査同様に感度・正確度が信頼できるかもまだ分りません。早期に国産化して普及できれば良いと思います。

4.島津製作所は3月4日、「新型コロナウイルス遺伝子検出試薬キット」の開発に着手したと発表した。現状のPCR法による新型コロナウイルスの検出は、鼻咽頭拭い液などの試料からRNAを抽出して精製する工程が欠かせない。同社が開発するキットは、試料からのRNA抽出工程を省けるため、検査の省力化や迅速化に貢献できるという。同社は、月産数万検査分の供給体制の早期確立を目指す方針。同社の「新型コロナウイルス遺伝子検出試薬キット」は、試料と前処理液を混合し、RT-PCR用の反応試薬を添加して反応させるだけで、ウイルスの有無が判定できるというもの。PCR法では、煩雑な手作業が求められるRNA精製に約30分程度の時間を要するため、迅速な検査の妨げになっていた。

5.現在主流となっている「PCR法」は、ウイルスのDNAを、その複製に関与するプライマーなどを用いて大量に増幅させる方法。ごく微量のDNAであっても検出が可能なため、病原体の検出検査によく使われている。 しかし、現在の手法では、結果が出るまでに4〜6時間を要することが障害になっている。 これを10〜30分程度に短縮する手法を、理化学研究所や神奈川県衛生研究所が開発した。 理研が開発した「SmartAmp(スマートアンプ)法」を用いる。PCR法では、新型コロナウイルスを検出するため、加熱と冷却を繰り返す作業が必要で、解析に時間がかかる。スマートアンプ法は一定の温度で、より単純な工程で検出でき、時間の短縮につながるという。

6.結果が出るまでに時間かかるPCR法を大幅にスピードアップさせ、15分程度で診断ができる手法を、産業技術総合研究所(産総研)と杏林製薬の研究チームも開発した。 開発した新たな機器を使うと、試料を素早く目標の温度に上げ下げすることができ、新型コロナウイルスの有無を早く判定できるという。

7.キヤノンメディカルシステムズも、新型コロナウイルスを短時間で検出できる遺伝子検査システムの開発を始めた。 同社は日本医療研究開発機構(AMED)の研究に参画し、新たな診断法を開発する研究に着手。長崎大学の協力を得て、15分以内に検査の結果を判定できる検査システムの開発を目指している。

8.花王は、北里大学大村智記念研究所ウイルス感染制御学 I 研究室の片山和彦教授らとEpsilon Molecular Engineering(以下、EME)と協力し、新型コロナウイルスの細胞への感染を抑制できるVHH抗体(Variable of Heavy Chain of Heavy-chain Antibody)の作製に成功したと発表した。これにより、新型コロナウイルス感染症の治療薬や診断薬開発の応用が期待できる。VHH抗体は一般的な抗体すると10分の1の大きさで、アルパカなどラクダ科動物の血清中から見いだされた特殊な抗体(重鎖抗体)の可変領域を利用した低分子量の天然のシングルドメイン抗体。高い安定性や微生物による低コスト生産が可能。このVHH抗体がコロナウイルスに結合することで受容体への結合を阻害し、コロナウイルスの感染抑制につながる。

9.厚生労働省はきょう5月13日午前0時に新型コロナウイルスの抗原検査キットエスプライン SARS-CoV-2」(富士レビオ)」をスピード承認した。国内では初の新型コロナウイルスの抗原検査となる。現在、検査の主流であるPCR検査は4-6時間かかるが、同検査は約30分と短時間で検査結果が判明するのが特徴。一方で、感度はPCR検査ほど高くはなく、症状がある患者で、抗原検査で陽性となった場合は検査結果が確定されるが、陰性の場合は別途PCR検査による確定診断が必要となる。酵素免疫反応を測定原理としたイムノクロマト法により、鼻咽頭ぬぐい液中の SARS-CoV-2 抗原を検出する。

日本での治療薬の経過
1.
神奈川県立足柄上病院総合診療科の岩渕敬介氏らのグループは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)発症の初期から中期の患者3人にシクレソニド(商品名オルベスコ)を投与したところ、良好な経過を得たとの症例報告を発表した。MERSコロナウイルス、SARSコロナウイルスから推定される機序としては「シクレソニドの持つ抗ウイルス作用と抗炎症作用が重症化しつつある肺傷害を改善させるのではないか」との見解を示している。なお、現時点では同薬以外の吸入ステロイドに同じような作用は認められていないとのことだ。さらに、岩渕氏らによると「シクレソニドはプロドラッグの吸入薬で薬剤は肺表面にとどまり、血中濃度の増加はわずか」という。そのため、投与時期は、重症化する前の感染早期から中期、または肺炎の初期が望ましいとの考えを示している。同薬は既に未熟児・新生児から高齢者の慢性気道炎症に広く用いられており、安全性の面でも有利とのことだ。

2.日本感染症学会は2月26日、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する抗ウイルス薬による治療の考え方 第1版」(以下、「暫定指針」)を発表した。暫定指針ではMERSコロナウイルス感染症の治療に実際に使用されたことや、これまでに国内のCOVID-19患者への使用実績があることなどから、抗HIV薬のカレトラ(一般名ロピナビル・リトナビル)を最初に掲載。既存の臨床研究ならびに国内での使用実績と転帰を示している。この他、もう一つの選択肢として抗インフルエンザウイルス薬アビガン一般名ファビピラビル)を記載。国内のCOVID-19患者への使用実績はないが、現在、中国で臨床試験が進行中であることを紹介していたが使用例で有効であったという報告を受けて国内での増産とともに重症例では既に使われている。
アビガンについては妊婦での催奇性の問題など投与時の注意点を示している。カレトラは米国での開発でアビガンは国内開発かつ政府に備蓄があるのでアビガンが早急に試されているのだと思われ陽性診断例に対しては軽症例から専門医で検討され処方されている。さらに、暫定指針では、米国でCOVID-19に対する臨床第3相試験が開始されたウイルスのRNAポリメラーゼを阻害するとされるエボラ出血熱治療薬レムデシビル、あるいはインターフェロンクロロキンについては、「効果や併用効果に関しては今後の知見が待たれる」との記載にとどまっていたが、米国で有効性が確認されているレムデシベルについては米国で既に承認されたことから日本でも5月初旬には特例承認されている。重症例には専門医で検討して投薬される。

3.HIV治療薬のネルフィナビル、白血球減少症等に用いられるセファランチンの併用
東京理科大学は4月22日、国立感染症研究所で開発されたウイルス培養技術を利用して、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を培養細胞から効果的に排除できる薬剤を見出したと発表。約300の承認薬のウイルス増殖への効果を検証し、そのうち5剤がウイルス増殖による細胞傷害を抑えることを見出し、この中から特に「ネルフィナビル」と「セファランチン」に着目した。ネルフィナビルは抗HIV治療薬、セファランチンは白血球減少症や脱毛症、マムシ咬傷にもともと使用される薬剤である。これらはそれぞれ感染細胞から放出されるウイルスRNAを1日で最大0.01%以下にまで強く減少させた。ネルフィナビルとセファランチンの併用により、1日で感染細胞からのウイルスを検出限界以下に排除できることが確認された。作用機序としては、薬剤ドッキングシミュレーションによって、ネルフィナビルは新型コロナウイルス複製に必須のメインプロテアーゼに、セファランチンはウイルスと細胞の吸着に必要なウイルススパイクタンパク質にそれぞれ結合する可能性が示された。

4.寄生虫薬で死亡率減 「イベルメクチン」 米国の研究から
抗寄生虫薬の「イベルメクチン」に死亡率を下げる効果があるとする報告を、米国のチームがまとめた。イベルメクチンを使った患者の死亡率は、使わなかった患者と比べて約6分の1にまで抑えられたという。イベルメクチンは、2015年にノーベル医学生理学賞を受賞した、大村智・北里大特別栄誉教授が発見した細菌が生成する物質を基に作られている。寄生虫によって失明するオンコセルカ症や、皮膚が硬くなるリンパ系フィラリア症など、また、糞線虫ヒゼンダニなどの寄生虫に使われてきた薬剤。

5.アクテムラは中外製薬が創製した国産初の抗体医薬品。炎症性サイトカインの一種IL-6の作用を阻害する働きを持ち、国内では関節リウマチ、キャッスルマン病、高安動脈炎、巨細胞性動脈炎などの治療薬として承認されている。海外では、重症COVID-19肺炎患者約330例を対象に「アクテムラと標準的な医療措置の併用」の安全性・有効性を評価する第。相臨床試験の開始を親会社のロシュ(スイス)が発表している。重症COVID-19肺炎へのアクテムラの効果についてはノーベル医学生理学賞受賞者の本庶佑京大特別教授も期待を寄せており、4月6日と16日に発表したCOVID-19対策の緊急提言で、重症肺炎時の炎症反応暴走(サイトカインストーム)時へのトシリズマブ(アクテムラ)の使用や効果検証を求めている。

6.東京大学は8日、新型コロナウイルス患者の治療に、急性膵炎治療薬「ナファモスタット(フサン)」と新型インフルエンザ薬「アビガン」を併用する臨床研究を始めたと発表した。
フサンアビガンはともに新型コロナの治療薬候補で、フサンはヒト細胞へのウイルス侵入を妨げる可能性がある薬剤として期待されている。血液が固まるのを抑える働きもあるという。一方、アビガンはRNAポリメラーゼを抑制することでウイルスがヒトの細胞内で遺伝子を複製するのを抑える働きがあると考えられている。両剤はウイルスの増殖過程における作用部位が異なることから、両剤の併用により相加的な効果が得られることが期待される。また、COVID-19の一部の患者では血管内での病的な血液凝固が病気の悪化に関与していると考えられ、「注射用フサン50」の抗凝固作用が有効であると期待される。

新型コロナウイルスワクチン開発の経過
1.世界保健機関(WHO)によると、新型コロナに対するワクチンの研究開発プロジェクトは4月11日時点で70件。4月21日時点で海外で臨床試験が行われているワクチンは少なくとも5品ある。中国のカンシノ・バイオロジクス(康希諾生物)が開発するワクチン。3月18日から最初の第1相臨床試験(P1試験)を開始したばかり。米国で初めてP1試験を開始した米モデルナのmRNAワクチンも、4 - 6月期中にP2試験入りする予定。英オックスフォード大学のワクチンがP1/2試験中だ。夏の終りごろには5000人規模の試験を開始し、9月ごろには100万接種分を用意する計画という。米ファイザーは、独バイオNテックと提携し、今月末にもmRNAワクチンの臨床試験を始める。年内には数百万本レベル、来年には数億本レベルの量産を可能にする計画。ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)はBARDAと協力して10億ドル以上を投じ、9月にはP1試験を始める。年内に安全性、有効性を確認できれば、年明けごろにEUAを得て一部供給が可能と見ている。仏サノフィと英グラクソ・スミスクライン(GSK)も先ごろ共同開発契約を結び、今年中に臨床試験に着手。来年下半期の実用化を目指す。北米では、田辺三菱製薬傘の子会社・加メディカゴも、植物を用いたウイルス様粒子(VLP)ワクチンを開発。8月までにカナダで臨床試験を開始したい考えとある。
日本では、創薬ベンチャーのアンジェスのDNAワクチンが注目されている。タカラバイオ、ダイセル、EPSホールディングス、ペプチド研究所、新日本科学などと相次ぎ提携し、ワクチンの実用化に必要な基盤を整えてきた。当初は最短で9月ごろの治験入りを見込んでいたが、大阪府・大阪市のバックアップを得て、7月から大阪市立大学医学部附属病院で治験を始めることが可能になった。製造を担当するタカラバイオは、年内で20万人分のワクチン供給を目指して量産体制を準備。大阪府の吉村洋文知事は先ごろ記者会見で9月ごろにも実用化し、医療従事者などに優先的に投与していく考えを示している。

2.森下竜一氏(大阪大学大学院医学系研究科 臨床遺伝子治療学寄附講座教授)らが開発している新型コロナDNAワクチンは、新型コロナウイルスの遺伝子をプラスミド(細胞の染色2とは別に、複製・増殖する遺伝因子の総称)に挿入して作製するもの。1か月で数十万人分の生産を可能とし、製造はタカラバイオが行う。もともと鳥インフルエンザウイルスのパンデミック用に構築されたDNAプラスミド法を活用したもの。新型コロナウイルスは、これまでのコロナウイルス同様に、の部分がヒト体内のレセプターに接着して感染を引き起こす。新型コロナウイルスのSタンパク質(ウイルス表面のスパイクタンパク質)も、従来のコロナウイルスと比べて変異しておらず、Sタンパクを抗原とした新型コロナ感染予防DNAワクチン開発を進めている。安全性の確認については、「鳥インフルエンザ、エボラ、炭疽菌などの臨床試験が実施されており、良好な安全性が示されている」とある。森下氏は、「罹患した人に実際どのくらいの抗体ができているのか、特にウイルス感染後に産生されるIgG抗体ができているかの抗体検査による確認が重要になる」と指摘する。現在、P1試験中の新型コロナウイルスワクチンには、米バイオベンチャーのモデルナが開発する「RNAワクチン:DNAワクチンより発現効率が高いため、抗体が早くできる可能性がある。デメリット:非常に不安定なので、遺伝子発現のための補助が必要。コストが高い。生産能力が低い。」、米イノビオ・ファーマシューティカルズの「DNAワクチン:大量生産が可能、安価、安定している。デメリット:発現効率が低く、アジュバントなどの工夫を要する。」、中国の「アデノウイルスワクチン:発現効率が高いというメリットがある反面、アデノウイルスによる副作用の発熱など安全性に対する不安、生産能力低い、コスト高、アデノウイルスそのものに対する抗体もできるので抗体持続時間が半年?1年であるとすれば再度投与した場合効果がない」がある。「今後は、PCR検査よりもむしろ、抗体検査が簡便にできるようになってIgG抗体を持っているかどうかの判断が付けば、院内感染が減少して医療崩壊の危惧が遠のく」と予測し、「IgG抗体と、感染初期に出現するIgM抗体をしっかりと分けて正確に測定できる抗体検査の確立と、ワクチンの早期開発が医療崩壊を防ぐ大きなポイントになる」と重ねて強調している。

3.新型コロナウイルスワクチンの現在の状況 (2021.8月)
新型コロナウイルスワクチンの開発が各国で進められ臨床使用が始まっている。
新型コロナウイルスのワクチンには主なものだけでも、(1)ウイルスベクターワクチン(2)メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン(3)DNAワクチン(4)組み換えたんぱく質ワクチン(5)組み換えウイルス様粒子(VLP)ワクチン(6)不活化ワクチンと様々で、誘導できる免疫応答の種類なども異なる。(5) 組み換えVLPワクチンや(6)不活化ワクチンなどは相当数の投与実績を有する一方で、(1)ウイルスベクターワクチンや(2) mRNAワクチンなど、これまで承認されたワクチンがほとんどなく、投与実績が蓄積されていないものもある。コロナウイルスに対するワクチンは今回の新型コロナウイルスに対しての実用化が初めてで、同じコロナウイルスのSARSやMERSにはワクチンは実用化されていない。

(1) ウイルスベクターワクチン
ヒトに対して病原性のないまたは弱毒性のウイルスベクター(運び手)に抗原たんぱく質の遺伝子を組み込んだ、組み換えウイルスを投与するワクチン。エボラウイルスワクチンが承認されている。
ウイルス自体が細胞に侵入→細胞質で抗原たんぱく質をつくり出す→抗体によりウイルスを排除する「液性免疫」と、免疫細胞の1つであるキラーT細胞などにより排除する「細胞性免疫」を作り出す
イギリスのアストラゼネカとオックスフォード大学によるスパイク蛋白質の遺伝子組込みワクチンがある。日本ではアストラゼネカのワクチンを承認。
(2) mRNAワクチン
抗原たんぱく質の塩基配列を作る情報を持ったmRNAのワクチン。ウイルスのスパイクの部分を抗原にしてつくられている(変異したウイルスに対する有効なワクチンが必要になっても時間をかけずに開発が可能)。身体の免疫機構による自然免疫が過剰に誘導されるのを抑制するため脂質ナノ粒子(LNP)などに封入して投与する。
細胞質内でmRNAが抗原たんぱく質に翻訳され免疫を誘導→液性免疫、細胞性免疫も誘導
アメリカのファイザーモデルナ、日本の第一三共、ドイツのビオンテック (BioNTech)、イギリスのインペリアル・カレッジ・ロンドンが開発。日本ではファイザー、モデルナのワクチンを承認。
(3) DNAワクチン
抗原たんぱく質の塩基配列を作る情報を持ったプラスミド(環状)DNAのワクチン。
それ自体がアジュバント(免疫反応を増強させる物質)として自然免疫を誘導→核内でmRNAに転写され細胞質内で抗原たんぱく質を誘導→液性免疫及び細胞性免疫も誘導
アメリカのイノビオ・ファーマシューティカルズや大阪大発バイオ企業のアンジェスなどが開発中であるがまだ承認されていない(2021年1月現在)。
(4) 組換え蛋白質ワクチン
ウイルスの構成成分である抗原たんぱく質を昆虫細胞や植物、哺乳動物細胞などで作り、単離・精製したワクチンで、主に液性免疫を誘導すると考えられている。
主にスパイクたんぱく質を抗原とする組み換えたんぱく質ワクチンを、米バイオ医薬品開発のノババックス、中国クローバー・バイオファーマシューティカルズ、サノフィ、塩野義製薬(UMNファーマ)などが開発中。
(5) 組換えVLP(ウイルス様粒子)ワクチン
ウイルスのゲノムを含まない外殻たんぱく質のみを、微生物や昆虫細胞、植物で作り、単離、精製したワクチンで主に液性免疫を誘導する。B型肝炎ワクチン、子宮頸癌に対するヒトパピローマウイルスワクチン等が承認されている。
田辺三菱製薬の子会社であるカナダのメディカゴがVLPワクチンを開発中。
(6)不活化ワクチン
ウイルス自体を培養し、ホルマリンや加熱処理、紫外線照射などを用いてウイルスの感染性や病原性を消失させたワクチンで、ウイルスから自然免疫を誘導し、抗原蛋白質から液性免疫を誘導する。
ウイルスを培養するためウイルスの病原性に応じ、バイオセーフティーレベル(BSL)を満たした製造施設が必要となる。これまで世界では、日本脳炎ワクチン、ポリオワクチン、インフルエンザ菌b型(Hib)ワクチンなど、数々の不活化ワクチンが承認されている。
中国やインドの企業を中心に複数の企業が不活化ワクチンを開発中。日本では明治ホールディングス(HD)傘下のKMバイオロジクス(熊本市)も不活化ワクチンを開発中。
  日経バイオテクオンライン 2020年7月22日掲載から参照

今、ウイルスの変異が報告されている。変異とはウイルス増殖の過程で遺伝子のコピーにエラーが起こって性質の異なる異種ができること。たまたま感染力が強いという変異種が生き残ったということ。長期的にみれば、ウイルスは宿主との共存のため弱毒化していくのが通常(天然痘ウイルスは例外)。今開発されているワクチンがウイルスの変異によって効かなくなるようなことには簡単にはならない(HIVのウイルスはヒトの免疫系をすり抜けるように変化していくためワクチンができない)。
新型コロナウイルスはインフルエンザウイルスよりウイルス自体の病原性は低いといわれている。重症化には基礎疾患やヒトの免疫系の過剰反応、喫煙等のヒト側の因子が影響している。

日本人はなぜ新型コロナウイルス感染症での死亡者数が先進諸外国と比べて低いのか
1.
新型コロナウイルス感染症とBCGとの関連性BCG接種がコロナウイルス感染に対する免疫力を上げる→ ファクターX,BCGとCOVID-19

2.毎年インフルエンザが流行するため日頃からマスクをする習慣がある、手洗いの習慣がある(神社で参拝する際のてを清める習慣も古来からある感染症の予防が関連しているという説もあるそうです))、握手やハグなどの人と人が直接接する習慣が乏しい、家では靴を脱ぐ習慣等があり、自ら家屋を掃除して清潔に保つ習慣などが考えられます。さらに、2019年終わり頃から中国人の来日が多くあり春節時期に多く来日していることで武漢で流行し始めた軽いタイプのコロナウイルス(上記参照)によって免疫がある程度できていたのではないかと推測されること(まだ確証されてはいません)なども考えられます。
つまり、日本人の民度が高く衛生観念が高いということがあると考えられます。日本では一部の国のように「ロックダウン=命令=強制的」予防対策、ではなく、「要請=お願い」であったにも拘わらず、一部の人達・業者を除き自主的に健康と安全を守っています。

従って、日頃からものに付着しているウイルスに対し手洗い消毒などの感染予防を行うようにして下さい。また、閉鎖された空間で感染率は増加し室外では2m程度の距離での感染確率は低下することから換気は有効な予防対策です。風邪症状のある方、咳のある方は咳による飛沫感染を予防し感染拡大防止と咳エチケットの観点からマスクは有効です。一方、健康な方のマスクの予防効果はあまり高くないと言われています(外での散歩などいわゆるソーシャルディスタンスを保てる場所での効果は低く、閉鎖空間、人込みの中や満員電車などの公共交通では感染拡大防止のため効果がありますしお互いに安心感はあります)。インフルエンザと同じ様な注意を継続して下さい。今後しばらくは人の多い場所、特に閉鎖空間、への外出は避けることも有効です。⇒ 正しいマスクについてのWHOのリーフレット

3.マスクについて:マスクが不足してなかなか手に入らない状況が続いています。上記のように咳エチケット、つまり飛沫を飛ばさないという点ではサージカルマスクは効果があります。つまり、自分が罹っているか症状がないため分からない状況でもコロナウイルスに限らず飛沫感染を起こす感染症を拡大しないことに目的をおいています。罹らないような予防の目的では目の前の人の咳やくしゃみを直接かからないような目的以外効果は期待できません。その場合、本来は眼も防護しなくてはいけません。従って、この点においては口と鼻腔をカバーする布(ガーゼ)マスクでも効果は期待できます。一方、N95マスクは、0.5マイクロメートル以下の粒子を95%以上カットする性能を持ったマスクで周囲からの感染を防ぐ目的で使われます。眼の防護具もあります。従って、医療現場、特に感染症を扱う最前線では絶対に必要なものです。ところが、最近のマスク不足の影響は医療現場にも及んでいて現場は疲弊し、医療現場での感染者の数も増えてきています。これでは医療崩壊を招くことになります。

   ←サージカルマスク   ←N95マスク→ 

WHO(世界保健機関)が、新型コロナ感染症に関してマスクの使用を推奨しないとアナウンスしたり、逆に米国のCDC(疾病管理予防センター)が感染拡大防止の観点からマスク推奨したり、マスクについては議論が続いています。
英国の科学雑誌『nature』の「nature medicine」に掲載された最新論文によれば、サージカルマスクにコロナウイルス(新型コロナウイルスではなく従来ある4種のコロナウイルス)とインフルエンザウイルスの感染予防効果があるとわかったと書いています。このコロナウイルスは、季節性コロナウイルスで一般的な風邪の原因ウイルです。香港大学やハーバード大学公衆衛生学部などの研究グループによるもので、呼吸器ウイルス感染症が疑われる246人の参加者を、マスクを付けない122人とサージカルマスクをつける124人にランダムに振り分け、参加者の呼気を収集して分析した。 マスクをつけた群は飛沫とエアロゾル中のコロナウイルスを減少させ、飛沫中のインフルエンザウイルスを減少させた一方、ライノウイルスにはマスクの効果がないことを確認しています。まだマスクが新型コロナ感染症の感染拡大予防に効果があるとはっきりと言えないものの、飛沫感染やエアロゾル感染には一定の役割を果たすのではないかとしています。この研究結果は、無自覚の感染者による感染拡大を防ぐという意味でのマスクの効果を再確認したもので、私たちが持っている認識や最近になってCDCなどで推奨される理由とも合致します。マスクが健常者をウイルス感染から守るわけではないとはいえます。
サージカルマスクは、家庭用の不織布マスクとほぼ同等の機能を持っています。今回の研究結果により、不織布マスクの着用が感染拡大を防ぐための重要な対策になることが改めてわかったということになります。ただ、布マスクに同じ効果があるかはわかっていません。
オックスフォード大学のフェン氏は、極小の飛沫でも取り除くことができるN95やFPP3グレードの呼気弁付きマスクについて、「医療従事者のみが優先的に使えるようにすべきです」と語っています。「残念ながら、手づくりマスクが市中感染をどう低減できるかに関しては、研究が行なわれていません。ただ、マスクのメカニズムを調べる研究によれば、まったく役に立たないわけではないという証拠はあるようです」と、フェン氏は付け加えています。「自宅で待機すべきですが、どうしても外出の必要があるときは、手づくりのマスクでもないよりはマシなはずです」ということです。一方で、サウサンプトン大学の環境医療学教授ウィリアム・キーヴィル氏は、これに異を唱えています。「手づくりマスクは、まったく役に立ちません」と。ある研究では、使い古したTシャツでつくったマスクが飛沫感染を抑えることが示唆されています。しかし、サージカルマスクのほうが3倍効果が高いことから、そうしたマスクは単に「最後の手段」とみなすべきだと研究者らは言っています。

アメリカのJohns-Hopkins大学は新型コロナウイルスの感染状況に関するMapを公開しています。感染状況のデータは、WHO(世界保健機関)と CDC(アメリカ疾病予防管理センター)、ECDC(ヨーロッパ疾病予防管理センター)、CCDC(中国疾病予防管理センター)、NHC(中国国家衛生健康委員会)、DXY(中国の医療情報サイト)をデータソースとして利用しているとwebsiteにはあります。


SARSSevere Acute Respiratory Syndrome(重症急性呼吸器症候群)は中国広東省で最初に見られたと考えられるコロナウイルスの「SARS-CoV(SARSコロナウイルス):この時も新型コロナウイルスと言われた」が原因の、2003年頃に新しく報告された感染症です。
SARSを発症している人や、SARSコロナウイルスとの密接な接触後、通常2-10日(平均5-6日)たって、38℃以上の急な発熱、咳、息切れ、呼吸困難などインフルエンザのような症状がみられます。発熱が初めてみられてから約1週間後に、呼吸困難や咳など、肺炎の症状が現れ始め、それとともに他の人への感染力も強くなって行きます。胸部レントゲン写真をとると、肺炎または呼吸窮迫症候群(ARDS)の所見が見られます。または、下痢症状も比較的多くの方にみられ、頭痛、さむけ、食欲不振、全身のだるさ、意識がはっきりしないなどの症状が見られることもあります。症状が無い時期には、他の人への感染力は無いか、またはきわめて低いと考えられています。
2019年の新型コロナウイルスについてはWHO等公的機関から確認はされていませんが、前回のSARSコロナウイルスは基本的に、症状のあるヒトからヒトへと感染すると考えられています。SARS患者さんと接する看護や介護をした場合、同居の家族、あるいはその体液や気道分泌物に直接触れたりしたなど、「SARS患者との濃厚な(密接な)接触」があった場合等に感染の確率が高くなります。感染者が咳やくしゃみなどをした際に飛び散るしぶき(ウイルスを含んだ飛沫)を吸い込むことによる感染(飛沫感染)が中心であると考えられます。しかし、SARSの集団発生の例を疫学的に調査した結果、例えばそれ以外の、ウイルスやそれを含んだものに触れた手指や物を介した感染(接触感染)、排泄物に触れた手を介した感染(経口感染)、特別な条件下での空気感染なども完全に否定することはできませんが、可能性はかなり低いと考えられています。また、市場、調理のため、屠殺などで、野生動物と接触した人たちの血液を調査した結果から、一部の動物との密接な接触による感染の可能性も否定できないと報告されています。
SARSコロナウイルスに感染した人のどれくらいの割合で発症するかは不確定です。SARSの不顕性感染(感染はしているが症状は出ない場合)、あるいは極めて軽症な症例が存在する可能性もあったようです。今回の新型コロナウイルス感染症についてもヒトからヒトへの感染、どれくらいの割合で発症するのかなどまだはっきりと分かっていないのが現状です。感染者の状況から潜伏期間は7-14日くらいとインフルエンザSARSMERS等と比べると長い期間で経過をみる必要があります。
診断方法はウイルス遺伝子の断片があるかどうかを調べる遺伝子増幅法と、生きたウイルスを培養して分離・同定する方法でどちらも咽頭ぬぐい液、喀痰、血液、便、尿などで検査をします。SARSについては、LAMP(Loop-mediated Isothermal Amplification)法という遺伝子増幅法も開発されています。ただ、ウイルスを培養して分離する方法には時間がかかルのが問題点です。血清学的検査でも診断できます。酵素免疫測定法 (ELISA) 、免疫蛍光法 (IFA) 、中和抗体法(NT)等の方法がありますがどの方法でも発病初期には検出されず、感染してから10日目頃から抗体が検出され始め、感染した人の多くが抗体陽性になるのには3?4週間かかるため迅速な診断とはなりません。新型コロナウイルス感染症の診断も同様です。
有効なコロナウイルス感染症の治療法はまだ確立されていない(インフルエンザのように抗ウイルス薬が確定していない)ため肺炎などにみられる諸症状を改善させ、全身状態をよくするための対症療法(抗生剤や輸液等)が中心となります。コロナウイルスに対しても他の抗ウイルス剤(肝炎ウイルスのリバビリン等?)とステロイド剤を組み合わせた治療、インターフェロン、グリチルリチン、HIV/AIDS治療薬などによる治療で効果があったという報告もありますが、SARSが流行した時期では実験的治療の段階で今回の新型コロナウイルスに対しても効果があるとは証明されてはいません。
前回のSARSの世界的な流行の時の報告では、SARSの可能性があると診断された方のうち80?90%がインフルエンザ様の症状や、軽い肺炎を起こした後、6-7日で症状が改善し回復しています。10-20%の方が呼吸不全などで重症化しており、WHOが集団発生終息後に発表した全体の致死率は9.6%、つまりSARSコロナウイルスが原因で肺炎になった方のうち100人に9人-10人が亡くなったことになります。今回の新型コロナウイルス感染症については2020年1月終わり時点では情報が不十分でどれくらいの致死率なのか、治療でどれくらい改善していくのかなどまだほとんど不確定です。
SARSなどコロナウイルス感染症はが基本的に飛沫感染ですので、手洗い、咳・くしゃみなどの症状のある人が、マスクを使用することが最も重要です。一般的には、手洗いの励行など個人衛生に気をつけること、体力や免疫力の強化、十分に睡眠をとり過労をさけることなどがあげられます。また、コロナウイルス感染を疑う場合(感染地域からの帰国等)不必要に医療機関に行かないことも重要で電話での相談して下さい(各県の保健所等)。

中東呼吸器症候群(MERS:Middle East Respiratory Syndrome)は、2012年に初めて確認されたウイルス性の感染症で、原因となるウイルスはMERSコロナウイルス(MERS-CoV)と呼ばれています。2003年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)の原因となった病原体もコロナウイルスの仲間ですが、SARSとMERSは異なる病気です。

中東地域等で感染し、日本入国後に発症する可能性がありますが適切な対策をとることにより、感染拡大を防止することができます。日本では2015年6月初めまでの時点では患者発生の報告はありませんが、ヨーロッパ(イタリア、英国、オーストリア、オランダ、ギリシャ、ドイツ、フランス、トルコ)、アフリカ(アルジェリア、エジプト、チュニジア)、アジア (フィリピン、マレーシア、韓国、中国、タイ)、北米大陸(アメリカ合衆国)及び中東諸国(アラブ首長国連邦、イエメン、イラン、オマーン、カタール、クウェート、サウジアラビア、ヨルダン、レバノン<2015年6月24日現在>)からは患者の報告がありますが、これらはすべて、中東地域への渡航歴のある 人、中東諸国の方もしくはその接触者であることがわかっています。
2015 年1月21日から 2 類感染症に規定されています。現在も収束されていませんが一部地域に限定されるため注意は継続中です。
 *最新のMERS発生状況はWHO(世界保健機関) Disease Outbreak Newsのサイト(英語)(http://www.who.int/csr/don/en/

      
     MERS-コロナウイルス の電顕像 (国立感染症研究所)
(1)症状
主な症状は、潜伏期2?15日(中央値は5日程度)で発熱(38度C以上)、せき、息切れ、咽頭痛などの急性呼吸器症状で、下痢などの消化器症状を伴う場合もあります。症状野内場合やあっても通常の風邪症状のような軽症の人もいますが、特に高齢の方や糖尿病、慢性肺疾患、免疫不全などの基礎疾患のある人で重症化する傾向があります。重症化して死亡する割合は、WHOの報告では中東諸国で約40%とされています。韓国では既に死亡例が報道されています。

(2)感染経路
どのような経路でヒトがMERSに感染するかはまだ正確には分かっていません。2015年5月から韓国で患者が発生していました。その多くが、韓国内の病院での 院内感染によるものであると考えられています。患者から分離されたMERSコロナウイルスと同じウイルスが、中東のヒトコブラクダから分離されていること などから、ヒトコブラクダがMERSウイルスの保有動物で感染源の一つとして疑われています。日本国内のヒトコブラクダからはMERSコロナウイルスは確認されていません。患者の中には動物との接触歴がない人も多く含まれており、家族間感染、医療機関における患者間、患者-医療従事者間など、濃厚接触者間での感染も中東や韓国から報告されています。ヒト-ヒト間の感染経路はインフルエンザ同様に主に飛沫感染(咳やくしゃみなどによる:1m以内が危険域)又は接触感染による感染 であると考えられています。ただ、その感染力はインフルエンザのように強くはなく新型コロナウイルス同様に手洗いやマスクなどによる感染拡大予防効果はあるようです。

(3)予防及び治療
現在、MERS、SARS、新型コロナウイルス感染症に対するワクチンや特異的な治療法はありません。患者の症状に応じた治療(対症療法:うがい、手洗い、咳に対するマスクなどインフルエンザと同じ)になります。京都府立医科大学の研究グループがダチョウの卵からMERSウイルスに結合する抗体の精製に成功したとの報告もあり、これによってウイルスを覆って感染を予防できることが期待できるとあります。現在、スプレー製剤での効果を検証中です。ノロウイルスと異なり消毒にはアルコールは有効です。
感染者の発生している国(中東諸国や韓国等)を訪問し、帰国してから14日以内(新型コロナウイルス 2019-nCoV についても14日の経過観察は必要)に上記症状が出現しMERS感染、SARS感染症、新型コロナウイルス感染症が疑わしい場合はまず地域の保健所(福岡県 保健所管轄区域案内)または福岡県感染症対策課 092-643-3288 :外国語対応は福岡アジア医療サポートセンター 092-286-9595 に問い合わせて下さい。
2019年末の新型コロナウイルスによる中国肺炎について検疫にあるポスター

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するむらかみクリニックの診療方針について

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