水痘症(水疱瘡:chicken pox)
 水痘症(水疱瘡)は、ヒトヘルペスウイルスに属する水痘ウイルスによる感染で発熱とほぼ同時に水疱を伴う発疹の現れるウイルス性感染症です。幼児や学童期前半に多く、冬から春にかけて流行する傾向はありますが1年を通じて発生します。通常は10歳くらいまでに感染し、成人での抗体陽性率は90-95%と高い数値を示します。不顕性感染(感染しても発症しない)は少なく、麻疹(はしか)同様の強い感染力を有しています。従って、家族内感染発症率は90%以上あり、学校などでの流行は長期化する可能性が高い疾患です。発疹は紅斑(発赤)として始まり2 - 3 日のうちにかゆみを伴う丘疹・水疱・膿疱・痂皮の順に急速に進行し痂皮は数日後には落屑しますが、全身(体幹・四肢<躯幹より少ない>・顔面・頭髪部<これは特徴の一つ>・おむつかぶれなどの炎症部位など)に各段階のものが混在するのが特徴です。また、皮疹の数は重症度と相関します。細菌性二次感染を起こさなければ瘢痕を残さないが,色素脱失や色素沈着を数か月以上にわたり残すことが多い.潜伏期は10‐21日(平均14日くらい)で、すべてが痂皮化(乾燥)すると感染性はなくなります。基本的には自然感染により終生免疫を獲得する疾患です。(写真は顔面・体幹の多彩な水疱性丘疹:日本医師会刊行. 実践小児診療. 2003)
 免疫不全を有する乳幼児・学童では経過が遷延・重症化して死亡することもあり、さらに成人水痘症も重症化傾向があって肺炎の合併が多いので注意が必要です。先天性水痘症候群(頻度は約2%)は、妊娠初期(妊娠8 - 20週)の初感染により胎児に多彩な所見(瘢痕性皮膚病変・四肢低形成・白内障・脈絡網膜炎・小眼球症などの眼異常・小頭症・精神発達異常などの中枢神経系異常)を起こしてくる危険性の高い疾患です。もし、妊娠中に患者さんと接触のあった場合は、すぐにかかりつけ医両機関に相談するようにして下さい。
 治療としては、そう痒にはフェノール・亜鉛華リニメント(一般的にカチリと呼ばれています)の塗布、抗ヒスタミン剤の内服あるいは外用を行います。インフルエンザ同様にReye症候群(脳症)との関連性があるためアスピリンやボルタレンなどの解熱剤は使わない方がよく、安全と言われている解熱剤(アセトアミノフェン:カロナール、アンヒバなど)が使われます。早期治癒・回復のため、また重症化や合併症の軽減のため抗ウイルス薬のゾビラックス顆粒を感染初期に用いる治療法が主流になっています(皮疹数・発熱・そう痒感などの症状軽減罹病期間の短縮が認められ、わが国では水疱出現3日以内の投与が勧められており早期に投与するほど効果的です)。2週間くらい前、周りに水痘症の方がいて接触している、幼稚園や学校で流行している、あるいは上記の症状から水痘症が疑わしいと思った場合は、すぐにかかりつけの医療機関に行くようにして下さい。

 登園・登校はすべての皮疹が痂皮化(乾燥)して、つまり感染力が無くなってから可能となります。

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