第1回目はn-3系脂肪酸についてのお話しです
1. n-3系脂肪酸について
n-3系脂肪酸はいわゆる植物系脂肪酸のことで、一般に不飽和脂肪酸(必須脂肪酸:生体内で合成されず食事として摂る必要があるため必須脂肪酸と呼ばれています))として知られています。
a.抗炎症作用
 疫学的には、n-3系脂肪酸を豊富に含有する魚油を多量に摂取するイヌイットでは脳出血・脳梗塞や心筋梗塞・狭心症、アレルギー疾患が少ないことが報告され、n-3系脂肪酸の効果が注目されるようになりました。
 体の代謝のなかで、n-6系脂肪酸である
リノール酸はアラキドン酸を経て、エイコサノイドのような代謝産物を生成します。n-6系脂肪酸の過剰摂取は細い動脈の閉塞など過剰な炎症反応を起こさせて生体にさまざまな障害をもたらし、その代謝産物の一部は脳梗塞、心筋梗塞などの梗塞性病変をもつ人に悪影響を及ぼします。しかし、n-3系脂肪酸であるα-リノレン酸やその代謝物質であるエイコサペンタエン酸はn-6系の代謝反応を競合的に阻害することが知られており、炎症などの反応を抑え結果としてフリーラジカルの産生が抑制されます。
b.免疫調節作用
 n-6系脂肪酸の過剰摂取は、免疫に作用する細胞の増殖を抑制します。一方、n-3系脂肪酸には前述の抗炎症作用に加えて細胞性免疫力を賦活する効果があります。しかし、n-6系脂肪酸には白血球の活性化作用などもあり、n-6・n-3系脂肪酸がバランス良く作用することで体の免疫調節がうまく行われると考えられています。実際の治療では、アレルギー疾患や慢性炎症性疾患、また、腸の炎症性疾患や脳梗塞などにおいてn-6系脂肪酸であるリノール酸の摂取量を減少させ、同時にn-3系脂肪酸のα-リノレン酸の摂取量を増加させて良好な治療効果が得られたという報告もあります。心筋梗塞・狭心症、腎疾患、自己免疫疾患(膠原病やリウマチなど)などでは、n-3系脂肪酸の投与により死亡率・再発率が減少し、臨床症状・検査データの改善、入院期間の短縮、薬剤使用量の減少等の有益性も報告されています。以上のことから,体のアレルギー反応性を低く維持することが栄養治療上重要で、最新の日本人栄養所要量指標ではn-6/n-3比は4程度が推奨されています。市販の食用油の中にはこの比をリノレン酸/リノール酸比として表示しているものもあるので注意して見てください。
具体的な食品としては、紫蘇(しそ)油はn-6/n-3比が良いとのことです。また、オリーブ油ごま油などはn-6系脂肪酸の割合が少ない点で過剰摂取を予防する効果があります。

第2回目は食物繊維について  
第3回目は微量元素と病気について 
第4回目は特殊栄養成分と生活習慣病の予防について 
第5回目は目と脳・皮膚の若返りについて 

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