麻疹(はしか)について

2007年の4月から5月にかけて関東を中心北海度、近畿・中国地方などに麻疹(はしか)が流行しています。大学を含む学校では休校や学級閉鎖が行われているところもあります。2007年5月22日現在福岡県での麻疹発生はまだ報告されていませんが夏までの間で散発的に見られています。
麻疹は高い熱と咳嗽、全身の発疹を特徴とするウイルス感染症で4類感染症に分類されている法定伝染病です。
(1)症状
飛沫感染後の10-14日の潜伏期を経て全身倦怠感、発熱、咳嗽、鼻汁・鼻閉などの上気道炎(風邪)様症状に加えてアデノウイルス感染症に似た症状で急激に発症します。これらの症状があって大体3日めくらいに口腔内の頬粘膜に中心部の発赤を伴ったKoplik斑と言われる白色点状小丘疹(粟粒とか粉チーズのようなどと表現されます)が見られこれは有力な診断根拠になります。2-3日続いて一旦熱が下がることがあり(二峰性発熱でこれも特徴の一つ)、そのあとに急激のさらに高い熱が出て、同時期に顔面・頬部に直径数mmで融合傾向のある紅い丘疹が出現し全身に拡がっていきます(風疹は三日はしか:three-day measlesと言われていて良く似ていますが、熱は麻疹より低い傾向があり発疹は頸部や後頭部から始まることが多くリンパ節腫脹を伴うなどの違いがあります。この言い方で、麻疹は英語圏でnine-day measlesと呼ばれています)。発疹が出現するとそれから2-3日で熱は下がってきて大体10日前後で回復します。しかし発疹後に色素沈着が残ることもあります。
発疹期までに合併症として麻疹肺炎や麻疹脳炎があり、これらに罹患すると重篤になることもあって特に注意を要します。回復期になっても乳幼児などでは中耳炎や肺炎(他の起炎菌によるものも含む)、SSPE(亜急性硬化性全脳炎:重篤です)に注意が必要です。
(2)診断
上記の特徴的な症状が大きな診断根拠となりますが、免疫学的検査(血清・抗体検査)で正確な診断が可能です。Ig-M急性期特異抗体を調べることで診断できます。また、以前感染した場合やワクチンを接種して既に免役を持っているかどうかについてはIg-G抗体を調べることで診断できます。また、咽頭などからPCR法によりウイルスの遺伝子を検出することでも診断できます。麻疹とよく似ている疾患は風疹以外に溶連菌感染症、猩紅熱、突発性発疹、薬疹、アデノウイルス感染症コクサッキーウイルス感染症や伝染性単核球症などがあります。
(3)治療
ウイルス性疾患ですので基本は対症療法です。合併症の可能性が疑われる場合には抗生剤などを用います。
麻疹患者さんと接触した場合、ガンマグロブリンの注射を予防的に行うこともあります。接触後6日以内なら効果が期待できますが、逆に効果の持続する1ヶ月の間はワクチンの接種はできません。免疫を持っていない方(感染の既往の無い方やワクチンを接種していない方)が対象です。予防にはワクチン接種が効果的ですので免疫の有無を医療機関で調べて、もし免疫の無かった場合はワクチンについて相談して下さい。

発疹の前後1週間程度(前5日間、後3日間)は感染力の強い時期ですので注意が必要です
   胸部の紅斑性丘疹

予防接種について
感染症情報センターによると、1歳児と、小学校入学前年度の1年間(4/1〜3/31)のお子様は定期接種として麻疹風疹混合(MR)ワクチン(あるいは麻疹単抗原ワクチン)の接種が可能、とあります。その他の方は、任意接種としてMRワクチン(麻疹・風疹混合ワクチン)、麻疹単抗原ワクチンのいずれも接種可能とあります。ただ、麻疹ワクチンを接種したら全く罹らないということではありません。典型的ではない症状が出ることもあり、その場合はペア抗体といって2回抗体検査を行ってその抗体価を比較することで診断することもあります。

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