新型インフルエンザについて(概要と経緯)         インフルエンザの最新情報

2009年4月、メキシコや北米で新型インフルエンザ(ヒト-ヒトへの感染が確定されてからフェーズ5となり豚インフルエンザから新型インフルエンザへ名称を変更)が流行してメキシコでは100人以上の死亡例が出るなど深刻な状況になっています(ただ、この死亡例については、新型インフルエンザによるものと確定した症例以外の死亡例も含まれていて、メキシコ政府はその後修正報告を何回か出しています)。WHO(世界保健機関)は 2009年4月30日未明(日本時間)Phase-5(下図参照)の警告を出し拡大防止に力を入れていました。国境閉鎖や渡航禁止勧告までは出していませんでしたが、感染が拡大していっていることから6月11日にはPhase-6へ警告レベルを引き上げました。
豚インフルエンザがヒトに感染し、さらにヒトからヒトへ感染・拡大していく事例が確定されたことに基づいています。ヒトの間で流行するのはA型とB型で、新型インフルエンザとしてパニックを引き起こした鳥インフルエンザはすべてA型です。これには、1-15型の赤血球凝集素:ヘマグルチニン(H)と、1-9型のノイラミニダーゼ蛋白(N)の組合わせがあり、特に病原性が強いものを高病原性鳥インフルエンザと呼び、H5型(H5N1など)とH7型(H7N7など)が知られています。このような変異してヒトに感染する新型インフルエンザに対してはヒトは免疫を持っておらず大流行(パンデミック:Pandemic)を起こす危険性があります。過去に世界的な大流行を起こした例として、1918-1919年のスペイン風邪(H1N1、世界中で2、000万-5、000万人が死亡したとされる)、1957-1958年のアジア風邪(H2N2)、1968-1969年の香港風邪(H3N2)、1977-1978年のソ連風邪(H1N1)、近年では、パンデミックには至りませんでしたが2004-2007年の発生(H5N1)などがあります。Hナンバーなど数字が5以上だと感染力が強いと言われています。
    2009年6月11日現在、警告レベルPhase-6 となっています

今回、その病原性鳥インフルエンザが豚に感染し、その中で変異したウイルスがヒトに感染したものと考えられています。

2009年4月30日午後、ロサンゼルス発成田行きノースウェスト航空の到着便に搭乗していた25歳の日本人女性にA型インフルエンザ診断結果が陽性となり、新型インフルエンザ感染の疑いがあるとのことで感染病棟に隔離され経過をみていましたが新型ではないとの結果でした。さらに、4月下旬カナダに研修旅行に行った横浜の17歳の男子高校生もA型インフルエンザ陽性診断が出ましたが(通常のA型あるいはB型のインフルエンザの診断はこれまでの季節性インフルエンザの診断方法で可能)25歳の女性と同じように新型インフルエンザは否定され季節性インフルエンザ(A型)でした。その後、数例の新型インフルエンザの疑い例が出ましたが季節性インフルエンザであったと報告されました。しかし、5月16日に日本国内で神戸市大阪の高校生など5名の新型インフルエンザの感染が確認されて以来、6月25日13時までの報告では九州から北海道など国内の感染者数は1000名を超えました。さらに多くの潜在感染者がいると推測されます。当初、大阪府内の幼稚園・保育所と小中高校、兵庫県内の大学を含むほとんどの学校や幼稚園・保育所での7日間の休校処置がとられましたが、25日以降は適時対応するように緩和され休校していた学校も再開されています。最近では、これまでの季節性インフルエンザと同じように対応していくとの政府発表です。弱毒ですが感染力が強く(通常の季節性インフルエンザの1.5-1.7倍くらいあると考えられています)、感染拡大は学校での集団感染が主な原因と考えられていますが、年齢層の拡大もみられるため別感染ルートの存在も疑われていて、企業なども時差通勤など予防処置をとりました。政府は当初、フェーズを上げることや移動制限を強化することなど考えていないとの報道でしたが、神戸や近畿圏内への旅行や出張を自粛するなど経済活動への影響が懸念されています(今回の経済損失は800億円と試算されているようです)。
5月25日になって、福岡県でも初の感染者が出ました。38歳の米国人男性で、22日ロサンゼルスからサンフランシスコ経由で成田に着き、同日福岡(志免町)に移動。24日に39度の発熱があって発熱外来を受診、PCR検査で診断が確定されました。濃厚接触者については、福岡県は行動自粛を要請し経過をみていましたが拡大はみられませんでした。しかし、6月に入ってから福岡市博多区内の中学校で感染者が診断され感染が拡大しています。米国人男性が博多区内の飲食店に立ち寄ったという情報が県から知らされていなかったと福岡市は言っていますが、そのためかA型と簡易検査で診断された感染者に対しPCRでの新型インフルエンザ診断を行わなかったようです。
日本の医療水準は非常に高くインフルエンザの診断技術も高いレベルにあるため(感染者が急激に増え続けているのは他の国と医療事情が違って診断が迅速かつ正確なことによると思います)、WHOは日本の感染状況もみてフェーズを上げるかの判断をしたようですが、オーストラリアなど南半球の国での急速な感染拡大が確認され、結局、6月11日で世界的なパンデミックの状況を示す警告レベルPhase-6へと引き上げを通告しました。季節性インフルエンザの流行する時期には新型と合わせてさらなる注意が必要です。多くの専門家は次に大きな感染拡大が起ることを予想しています。
中国でも新型インフルエンザ感染者が確定したと報道されており(SARSの件もあったし正確な感染者数については・・・)、アジアでも少しずつですが拡大していっているのではないでしょうか。日本の感染者は海外の感染地域に行っておらず、そのような地域空の帰国者との接触もないとの報道ですが、状況からは既に日本にも新型インフルエンザが入っていて確実にヒト-ヒト感染を繰り返していたと考えられます。
インフルエンザ対策研究の国際チームは、旅行者を通じた世界各国への感染拡大の状況などから、4月末にメキシコで感染者は2万3000人いたと推計。当時の死者数から、感染後の致死率は約0.44%(確定例だけでは0.04%)で、1918年出現のスペイン風邪(約2%)よりは低いが、アジア風邪(約0.5%)に匹敵するとしています。
下記の予防対策をしっかりと行うことが感染拡大防止に重要です。

感染してから症状が出るまでの潜伏期間は1-5日、長くて7日程度と言われています。一方、他人に感染させる恐れがあるのは、症状が出る1日前から発症後7日程度と考えられており特にこの期間は注意が必要です。このことから、感染予防の隔離処置は(休校も含め)7日間となっています。
感染経路について、通常の季節性インフルエンザと同様、感染者の咳やくしゃみのしぶきに含まれるウイルスを吸い込む「飛沫(ひまつ)感染」が主とみられており、一般に感染者から約2メートル以内の距離にいると感染の恐れが強いとされています。ウイルスが付着した物に触った手で口や鼻に触れることでウイルスが体内に入り感染することも重大な感染経路となります。
A型・B型インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼ蛋白の合成を阻害する作用を有する薬剤であるタミフルリレンザは、今回の新型インフルエンザやこれまで見られた鳥インフルエンザに対しても今のところ(抵抗性を示す変異があるかもしれないので・・・)有効と考えられていましたが、5月20日、国立感染症研究所は「最初の新型インフルエンザ感染者から採取したウイルスの全遺伝子を解析した結果両薬剤とも耐性はみられず有効である」と発表しました。ただ、タミフルやリレンザは新型インフルエンザの急速な拡大という報道以降は入手困難になってきています。一方、厚生労働省によると、国と都道府県でタミフル(3380万人分)とリレンザ(270万人分)で計3650万人分を備蓄済みであり、さらにタミフル830万人分の備蓄を上積みする、とのことです。報道によると、新型インフルエンザワクチンは2500万人分の準備を行うとのことですが、従来の季節性インフルエンザワクチンは毎年5000-6000万人分が使用されていて、新型ワクチンを製造する分季節性ワクチンが減るのは仕方がありません。以前のような大病院によるワクチンの買い占めやパニックにならないことを望んでいます。
今回の新型インフルエンザウイルスの感染力は強いとみられますが毒性そのものは低く現時点では重症患者は少ないと考えられています。しかし、ヒト-ヒト感染を繰り返していくうちに変異し感染力が強まって重大なパンデミックに発展する危険性は否定されていません。パニックにならず、新型と言えどインフルエンザに対しては感染拡大防止も含め予防が一番重要なのでこれを実践して下さい。

最近の報道では、これまでの季節性インフルエンザとの共通性や違いやなどについて次のように言われています;
国立感染症研究所によると、米国患者44人の分析では、96%に高熱(平均39度)があり、咳、のどの痛み、筋肉痛など典型的なインフルエンザの症状が多く報告されたとのことです。特徴として、感染者の約半数に通常のA型インフルエンザではあまりみられない吐気や下痢の症状がみられたことがあげられますが(それぞれ4分の1で見られたとの発表)、季節性インフルエンザでもB型では下痢などの消化器症状がよくみられますので注意が必要です。
今回の新型インフルエンザについては、通常の季節性インフルエンザでは重症化しやすい60歳以上の感染者がほとんどおらず、10代など若い世代の感染者が多いことが注目されています。米疾病対策センター(CDCの最近の報告によると、感染者の60%は18歳以下、51歳以上はわずか5%だったとのことです。米国の研究機関の報告では、1957年以前に生まれた人達は過去に似たウイルスに感染するなどし、何らかの免疫を持っているのでは、との見解です。

今回の新型インフルエンザは急速な拡大を示していますが、米テキサス大学医学部(ヒューストン)のLuis Z. Ostrosky博士によると、過去に発生したインフルエンザの大流行では、晩春ないし初夏に小さな流行が認められた後、冬期に大きな流行が起きており、今回のウイルスも過去にみられたパターンどおりだとすれば、冬に再流行する可能性が高い、と報告しており、現在感染が拡大している新型インフルエンザ(H1N1)は、通常の季節性インフルエンザと同じように夏期には一旦沈静化するが、秋以降に再出現する可能性が高いと多くの専門家が予測しています。北半球と南半球は季節が逆になりますし(事実、南半球では感染が拡大しています)、現代は人の交流が以前のパンデミック発生当時より盛んという事情もあって注意が必要です。

インフルエンザに対してはやはり予防が一番といえますうがい手洗いマスクの着用(すき間をつくらない)、人込みには入らないなどが基本です。また、豚インフルエンザの場合、鳥も同様ですが、充分に加熱調理された鳥肉や豚肉を食べても感染することはありませんので過度に神経質になる必要はありません。ただ、今回の新型(豚)インフルエンザに対してはこれまで行った予防接種の有効性は確定されておらず、現時点ではまだ有効なワクチンは製造されていません。新型インフルエンザに有効なワクチンの製造には今回のインフルエンザウイルスを検出してから数ヶ月を要します。来期のインフルエンザ流行前の予防接種は従来の季節性インフルエンザワクチン(A型・B型)に加えて新型インフルエンザワクチンの2種類のワクチンを注射しなくてはならないのか(従来2回接種していた方は計4回も注射する必要があるのか!?)、現時点では供給も含めどのように対応するのか不明です。
新型インフルエンザの発生が確認された国や地域から帰国した人でインフルエンザを疑う症状がある場合はPhase-5以上の段階では指定された発熱外来を受診してもらうことになります(詳細は最寄りの保健所や市町村役場にお問い合わせ下さい)。季節性インフルエンザはこれまでのように医療機関で迅速診断キットを使って診断が可能ですが、A型・B型の診断であって新型インフルエンザの確定診断はできません。A型と診断され新型が疑われた場合は保健所等の支持に従うことになります。

繰り返しますが、インフルエンザに対しては予防が一番大切です!

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