インフルエンザ

1.接種費用について(2020年度)
2.65歳以上の方への接種費用の一部補助
3.予防接種の可否と実施時期
4.インフルエンザ(過去数年の状況)とその予防
5.タミフルの副作用報道
6.2009年発生の新型(豚)インフルエンザについて

感染後発症すると、38度から39度以上の高い熱と全身倦怠感、咽頭痛などが特徴的な症状です。また、37度台の熱がダラダラ続く時も疑われます。
インフルエンザについては外来で迅速に(15分以内)診断できる検査があります。しかし、罹らないことが一番で、罹っても軽い程度で済み早く良くなることが大切です。そのためには予防接種を受けておくことが大切です。
原則的にインフルエンザの予防薬(内服)という目的の薬はありません。治療に関してはインフルエンザの治療薬(抗インフルエンザウイルス剤:商品名タミフル、リレンザなど)があります。ただ、家族内にインフルエンザ感染者がいて基礎疾患に肺気腫や慢性気管支炎、喘息、糖尿病などを有する65歳以上の高齢者については治療薬であるタミフル等の予防投与が認められるようになりました。しかし、タミフルによる異常行動の疑いなどの報道からその使用を控える動きもあり(下記参照)薬剤による予防が行いにくい状況にあります。

2007年のインフルエンザ流行の時期にタミフルの副作用と思われる異常行動の報道が頻回に行われるようになり、厚生労働省は当初はタミフルの副作用であるとの断定はできないとの立場をとっていましたが、ようやく重い腰を上げ、死亡例のあった10代の服用を原則控えるようにとの通達を出しています(死亡例は10代に限られましたが、10歳以下や20歳以上の場合でも異常行動と考えられる所見が見られた症例もあったとの報告です。また、タミフルを服用していない異常行動の報告もあっています)。高熱を伴う脳症もありますし、ある種解熱剤の併用でも似たような脳症が起る場合もあって異常行動とタミフルとの因果関係がはっきり証明されていないのは事実ですが、他の有効な治療薬であるリレンザの流通量が極めて少ないことを考えると現実タミフル(リレンザ)以外に有効な治療薬がないということになってしまいます。今年の流行について、製薬会社は昨年よりリレンザの流通量を増やしています(リレンザも吸入薬のためうまく吸入できないと効果も出にくく、A型についてはシンメトレルという薬剤も有効とされています)。タミフルを使わないでも治っていくと思いますが、その間、高い熱が持続してきつい状態が続いたり(脱水症なども合併)、インフルエンザの合併症である肺炎や脳炎の危険性も高くなります。特に、乳幼児や高齢者では使った方が良いとの意見が一部専門家から聞かれます。これまではタミフルを服用した場合、大体3日以内に熱は下がっています。
前年のタミフルの副作用報告からできるだけ使用しないのが良いとは思いますが、感染すると症状が激しく合併症の危険性があるのがインフルエンザです。従って、今回はできるだけ予防接種を受けておくことを勧めます。それも、今回からは免疫力の増強効果の見地から2回の接種が好ましいと考えます(高齢者、幼児など)。タミフルの服用については、絶対に使わないというより全身症状など総合的に判断して構わないと考えます。
最近はタミフルやラピアクタに対する耐性株も報告されています。予防は一番の治療と言えますので今回も予防接種を受けておいた方が良いと思います。特に今回はA型に対して2種類、B型に対しても2種類のウイルス株が配合されています(昨年まではA型2種、B型は1種のみ)。また、インフルエンザの予防注射を行ったからといってインフルエンザに罹らないということではありません。予防注射を受けておくと罹っても重症化しないですむ(高齢者のインフルエンザ肺炎や乳幼児のインフルエンザ脳症などの合併症などで亡くなる例もありました)ということです。インフルエンザに限らず感染症予防には大切なことですので、普段から手洗い・うがいを励行する習慣を身に付けておきましょう。

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予防接種
これまで3価(A型2株 + B型1株)であったワクチンが、4価(A型2株 + B型2株)になります。B型インフルエンザのワクチンを1種類追加することになります。主に流行するB型インフルエンザは、「山形系統」か「ビクトリア系統」と呼ばれる2つのタイプです。これまでは、両方が同時に流行することが少なかったため、シーズン前にどちらが流行するかを予測し、一方だけをワクチンに入れていました。しかし、今シーズン(2015年-2016年)からは、両方が入っているワクチンになります1)。これによって、どちらのB型インフルエンザが流行しても、もし両方が流行したとしても、十分に予防効果を発揮することができるようになります。そのためワクチンの原価が上がり接種費用も増えています。
 1) 厚生労働省 第10回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会配布資料
これまでなぜ4価のワクチンが作られなかったのかと言うことについては、以下のような理由によります;
日本では、「生物学的製剤基準」によって、薬に含まれるタンパク質の上限量が定められています。この制限は、薬に病原性のあるタンパク質が混入すること等を防ぐために必要なものですが、この制限によって、インフルエンザのワクチンを3株までしか入れることができませんでした。そのため、B型インフルエンザのうち、主に流行する2つの株から、”今シーズンは、どちらが流行するのか?”を予測して、どちらか一方だけをワクチンに入れる方法がとられてきました。
これまで、世界保健機構(WHO)も3価(A型2株 + B型1株)のインフルエンザワクチンを推奨していたこともあり、正しい予測がされれば問題ありませんでした。しかし、最近は2株のB型インフルエンザが同時流行する傾向が増えてきたため、4価のインフルエンザワクチンが求められていました。
アメリカでは日本に先立って2013年-2014年のシーズンから4価のワクチンを導入し、A型・B型インフルエンザを予防する際に有効であることを報告しています。

予防接種を受けてもすぐに免疫効果が現れるわけではありませんので、流行の1ヶ月前(最低でも2週間前)までには実施しておくことをお勧めします。急な高熱や咽頭痛を訴えてクリニックを受診されインフルエンザ迅速診断で陽性反応が見られるのは、昨年までにインフルエンザの予防接種を受けておられない方が大部分です。従って、今年のインフルエンザの遺伝子型は予防接種を行ったものとよく一致していたのではないかと推測されます。
予防接種を受けた場合、免疫の効果は1ヶ月くらいでピークに達し5ヶ月から半年くらい続くといわれています。今期の予防接種については厚生労働省の通達では1回の接種で免疫効果は期待できるとしていますが、3歳以上12歳までの学童については2回の接種を推奨しています。1回の接種による免疫効果は大体2週間くらいで現れてきます。

予防接種は注射を受ける前に現在の健康状態アレルギーの有無などについての問診表に記載しなければなりません。接種時に発熱のある方(風邪を引いている)、卵や鶏肉にアレルギーのある方は接種できないことがあります。従って、インフルエンザの予防接種は当日に37.3度以上の発熱のある方や卵にアレルギーのある方、また以前予防接種でじん麻疹等の副作用のあった方、既往歴にギラン・バレー症候群という神経疾患のある方は受けられませんのでかかりつけ医にご相談下さい。
予防接種を行った後に身体反応などが見られることがあります。これには予防接種による副反応以外に元々あった疾患が偶発的に発症あるいは見つかった場合もあります。

主な副反応としては接種部位の発赤腫脹掻痒感痛みなどで、広範囲に発疹、じん麻疹、紅斑などが現れることもあり、接種直後から数日後まで見られます。全身症状としては、発熱や頭痛、全身倦怠感などがありますが通常数日で改善します。
重大な副反応にはアナフィラキシーショックがあり大体30分以内に発現します。その他重大なものには、ギラン・バレー症候群、痙攣、肝機能障害、喘息発作誘発、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)がなどがありますが、発生頻度は必ずしも高くはありません。

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ワクチン接種の費用について
2012年10月以降接種回数、費用等毎年の行政通達で変更されています。今年の接種費用は下記の通りです。
3歳以上はすべて0.5mlの接種となります。1歳から12歳までの方以外は原則的に1回の接種です。

2020年の4価ワクチン接種費用と接種回数について
3歳以上
は1回の接種費用は;3、500円
今期の接種については、1歳以上12歳までの学童は2回接種が推奨されていてます。受験生など2回の接種を希望される方はご相談下さい。
ワクチン量に限りがありますのでむらかみクリニックにかかりつけの方を優先的に接種していますのでかかりつけの方は予約は不要です。
2020年の接種期間は10月1日から12月末日(クリニック診療時間)までの予定です(ワクチンがあるときは接種します)。

65歳以上の方に対する行政からの補助
インフルエンザ流行の前に予防接種を受けることを勧めています。福岡県筑紫野市及び周辺地域(太宰府市、春日市、大野城市、那珂川町で、詳細や他の地域での実施は役所にお尋ね下さい)では、65歳以上の方々、60歳以上65歳未満で腎臓・心臓などの機能に重い障害のある方(障害者手帳1級程度)、またはヒト免疫不全ウイルス感染など予防接種診断基準を満たす人、に対してインフルエンザ予防接種への補助を行っており、例年通り1回の接種について自己負担金1,500円で受けることができる制度があります。今年は新型コロナウイルス感染症と重なるためインフルエンザの予防接種はさらに残りの金額を福岡県が補助して実質無料で接種できるようになります。補助が受けられるのは1回の接種のみです。13歳以上は原則1回で良いと思います。65歳以上の接種の案内では接種期間は10月1日から2020年2月28日までとなっていますが、流行時期や免疫の有効期間を考慮して今年の接種時期は2020年12月末日(当クリニックの年末の診療時間内)の予定ですが準備したワクチンが無くなり次第終了します(年が明けてもワクチンがあれば接種を行います)。お問い合わせ下さい。
筑紫地区では今期から、インフルエンザ予防接種自己負担金免除通知書、を持参されると接種費用が無料となります。
詳細は受付でお尋ね下さい。

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