A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎溶連菌

 幼児、学童(特に5-15 歳)に好発しますが成人も発症することもある冬から春にかけて多くみられる感染症です。一般的に「かぜ」と言われている病気の一つです。「かぜ」と言っているものには、この溶連菌感染症以外に、ウイルス感染や細菌感染による扁桃炎、咽頭炎、喉頭炎(咽喉頭炎)、鼻炎、副鼻腔炎などが含まれ、また症状からは「かぜ」と言われていても実際は気管支炎やマイコプラズマ肺炎である場合があり、下痢や嘔吐、腹痛をきたしてくる感染症(ロタウイルス感染症や小型球形ウイルス感染症、アデノウイルス感染症等)も「かぜ」と総称されることがあります。

 鼻汁・唾液中の溶連菌の飛散によって鼻・咽腔を通して人から人に感染しますが、食品や飲料水による経口感染や皮膚の創傷部位からの感染もあります。1-4日の潜伏期間を経て突然の発熱(38度以上)、咽頭痛・嚥下痛、全身倦怠、扁桃の発赤腫脹、頸部リンパ腺腫脹、時に皮疹が出現します。また、小児の場合は嘔吐・腹痛などを併発することがあり、特徴的な莓舌や皮疹がみられることもあります。菌が産生する発赤毒素に対して免疫をもたない場合は猩紅熱となるので注意が必要です。
   浮腫・発赤をきたした咽頭と腫大した扁桃 (日本医師会雑誌臨時増刊号 感染症の現状と対策より
 診断は血液検査(白血球数、ASO値等)や咽頭の溶連菌培養で行いますが外来で迅速診断キット(凝集反応)を用いて15分以内の診断が可能です(当クリニックでも実施可)。迅速診断は溶連菌感染の存在について診断できる優れた検査法ですが溶連菌群の型の判定はできず、このためには時間はかかりますが咽頭培養を行う必要があります。

よく似た症状を示す疾患には、ウイルス性咽頭炎(インフルエンザ、エコー、コクサッキー、アデノ、単純ヘルペスなど)と他の細菌性咽頭炎(臨床的意義は少ないのですがインフルエンザ菌など)があります。
治療薬としてはペニシリン系薬剤が有効ですが、セフェム系薬剤またはマクロライド系薬剤でも効果はありますし(ただ、マクロライド系は耐性ができてきているのでその選択には注意が必要です)、特にペニシリンアレルギーのある場合は投与されます。合併症予防のために7-10 日間の投与が必要で、重症例では抗生剤の点滴静注を行ったり脱水症状がみられる場合は補液が必要となります(特に小児)。
発熱は通常3-5 日以内に下がり、主な症状は通常1 週間以内に消失します。ただ、扁桃や頸部リンパ節がもとの大きさに戻るのには数週間かかることもあります。
合併症として、化膿性合併症(扁桃周囲膿瘍、急性中耳炎、急性副鼻腔炎など)や非化膿性合併症(リウマチ熱、急性糸球体腎炎など)がありますので油断はできません。
学校,家庭などの集団での発生が多いので集団内での保菌者の治療や予防が大切です。
伝染性紅斑(りんご病)、手足口病、帯状疱疹に加えて溶連菌感染症は学校伝染病第3種のその他の伝染病とされており出席停止期間の基準(必要がある場合のみ)が決められていますので登校・登園の可否についてはかかりつけ医に相談するようにして下さい。

溶血性連鎖球菌感染症についてのパンフレットをPDFファイル形式でダウンロードできます 
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